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2014.07.03 [2014]
芭蕉没後320年記念出版 『諸注評釈 新芭蕉俳句大成』<ご予約特典のご案内>

諸注評釈 新芭蕉俳句大成 

 

 

編者のことば

 第二次大戦後の芭蕉研究は大きく変化した。芭蕉の作品の中で最も親しまれてきた発句(俳句)についても、そこに「詩」を読むことと共に、「俳諧」を読みとることが加わり、新しい解釈・鑑賞が展開してきた。たとえば「古池や」の句についていえば、これを日常詩としてみる白石悌三の説、『袋草子』の故事のパロディとみる深沢眞二の説、切字「や」のあとの空白を重視して蛙は実際には池に飛び込まなかったとみる長谷川櫂の説など、さまざまの説が提示されてきた。 

 芭蕉発句の注釈は、いくつかの古典文学全集類の芭蕉句集において、全句評釈が試みられてきたほか、各種の講座・辞典でもとり上げられ、さらに研究者の論文のなかでも、その一句一句について独自な解釈が展開されている。

 本書は、そうした戦後約七〇年間に登場してきた諸説を可能な限り一つ一つ、その要点を紹介・整理して、それぞれの句の解釈の方向性を探ろうとするものである。  

 本書に先行するものとして、江戸期以降、昭和三〇年代頃までをあつかった、岩田九郎の『芭蕉俳句大成』(一九六七、明治書院)がある。この『大成』の意義はきわめて大きいものであった。本書はこれを発展的に継承し、戦後山本健吉以降、現在に至るまでの諸注集成として編纂されるものである。

 研究者はいうに及ばず、一般読者、俳句愛好者にとっても座右の書としてきわめて便利であり、かつ有益なものとなると確信する。

編者 堀切 実 (早稲田大学名誉教授)
田中義信 (白百合女子大学名誉教授)
佐藤勝明 (和洋女子大学名誉教授)

 

 

 

 

本書の特色

一、芭蕉の全発句一〇〇二句(存疑句を含む)を掲出。
一、戦後約七〇年間の研究諸説を網羅的に収集、整理。
一、芭蕉研究の精鋭を、編集委員として加えた丁寧な編集。
    ・藤原マリ子(元山口大学教授)
    ・玉城 司(清泉女学院大学客員教授)
    ・金田房子(国文学研究資料館特任准教授)
    ・深沢眞二(和光大学教授)
一、俳文学会の研究者を中心に、気鋭の俳人をも加えた多彩な執筆陣。
一、わかりやすい五項目の解説。
  【 考 】
成立年次、季語、前書など。
  【 解 】句の解釈、ことばの注。
  【諸注】各文献を(イ)(ロ)(ハ)に分類し、努めて本文を引用しながら、要趣を紹介。

  (イ) 日本古典文学大系45『芭蕉句集』(一九六二)から近年の角川ソフィア文庫『芭蕉全句集』(二〇一〇)までの、芭蕉全句評注釈書九点。
  (ロ) 一般読書人向けに芭蕉の句を解説した、『芭蕉講座』(一九五三)から『名歌名句大事典』(二〇一二)まで、講座・辞典類一三点。
  (ハ) 研究者・俳人による特色ある単著として、山本健吉『芭蕉――その鑑賞と批評』(一九五七)から高柳克弘『芭蕉の一句』(二〇〇九)までの約三〇点を中心に、芭蕉句についての評釈、鑑賞を網羅的に収集。

  【 形 】句形の異同、初案、改案、成案。
  【 評 】一句の問題点と今後の展望。

 

 

体裁

 A5判 上製函入り 1256頁

 

 

本文組見本

諸注評釈 新芭蕉俳句大成

 

 

推薦のことば

 

『新芭蕉俳句大成』に期待する―「夏草や」の一句を例に―

ドナルド・キーン(日本文学研究者)

 一九四六年(昭和二十一年)、コロンビア大学の角田柳作先生の指導の下、私は『おくのほそ道』に出会いました。それからずっと芭蕉の生涯と芭蕉の俳句の研究を続けてきました。

 俳句は世界でもっとも短い詩です。しかし、ヨーロッパのエピグラムとは違って、深い詩の世界を形成しています。

 芭蕉の句にはたくさん好きなものがありますが、その中で「どうしても一番いい句と思うものを選べ」と脅迫されたら、

  夏草や兵どもが夢の跡

をあげるでしょう。眼前に茂る夏草、そこに昔戦って死んでいった兵どもの姿が蘇る―どうしてこんな詩の世界をわずか十七音の文字で作れるのでしょう。しかも、この句には、ローマ字書きすると「O(お)」という発音が繰り返されています。「O」という発音は、洋の東西を問わず、悲しい音の響きがこめられているのです。

 「夏草や」の句は、「夢」の解釈をめぐってさまざまな説が展開されてきましたが、角川源義氏が「俳句の国際化」(『角川源義全集』四)という文章で書いたように、芭蕉はこのとき、複式夢幻能の「諸国一見の僧」の立場で、この句を発想したのだといった説も、近年見直されてきているようです。

 『新芭蕉俳句大成』には、戦後六十八年、ちょうど私が取り組んできた芭蕉研究の歴史と重なる年代の、そうした芭蕉の句の研究の歩みが、丁寧にまとめられています。これからの芭蕉俳句研究の再出発となるでしょう。俳句の国際的研究を進める上でも、大変有意義な本となるでしょう。

 

明るく自在に、七十年間の諸注を探る

金子兜太(俳人)

 この『新芭蕉俳句大成』は、芭蕉の全発句についての、戦後約七十年間の諸説の要趣を整理点検し、「それぞれの句の解釈の方向性を探る」ものであるという。諸説の文献は膨大であるが、執筆陣には、研究者だけではなく、優秀な若手俳人も加わっているのが嬉しい。

 芭蕉の俳句の研究は、何も俳文学者だけのものではなく、かつての加藤楸邨をはじめ、主要な現代俳人たちも、俳句総合誌・結社誌などに、実作者の感性を生かした、独自性の強い説を発表してきた。そうしたものにも目配りをしているので、新鮮な期待がもてる。

 さらに編者に、現在の芭蕉研究をリードしている堀切実、田中善信、佐藤勝明の名があり、これをサポートする信頼できる編集委員も加わっている。特に芭蕉没後の俳諧大衆化への道を、「姿先情後」の説――「姿先」によって先ず大衆化をすすめ、「情後」によって師の求めていた内実を探るという表現論――をふりかざして、力強く切り拓いていった蕉門各務支考を研究することで、「和歌優美」に対する「俳諧自由」の精神を明らかにしてくれた堀切氏の見識には期待したい。

 

 

パンフレット

 

諸注評釈 新芭蕉俳句大成パンフレット
諸注評釈 新芭蕉俳句大成パンフレット

 

 

ご予約

■ご予約特典
2014年10月12日までの事前注文に限り、予約特別定価22,000円にて販売いたします。
※10月12日以降は、本体定価:25,000円での販売となります。

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・ホームページ:諸注評釈 新芭蕉俳句大成
・FAX:03-5292-6183 (お名前・ご住所・TEL・書名・冊数を明記ください)
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