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2011.01.01 [中国古典小説選]
中国古典小説選 全12巻

中国古典小説選 全12巻
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◆竹田 晃〈東京大学名誉教授〉・黒田真美子〈法政大学教授〉編

<刊行のことば>

 中国の小説と言うと、多くの人々は『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』『紅楼夢』『聊斎志異』等の書名を頭に浮かべ、また魯迅の「阿Q正伝」「狂人日記」、茅盾の「子夜」等の作品名を挙げるのではないだろうか。

 これらの小説は、いずれも中国小説史の流れの中に生まれた有名な作品であるが、必ずしも同質の小説として一律に扱うことはできない。例えば、『三国志演義』『水滸伝』等と魯迅の「阿Q正伝」とは、作られた時代によってはっきり二つに分けられる。前者は前近代に書かれたいわゆる「古典小説」であり、後者は近代的意識に目覚めた作家が、西欧や日本の近代文学の影響を受けて書いた作品を源とする「近代小説」である。

 さらに「古典小説」は、そこに用いられた言葉によって、異質の二グループに分けられる。『三国志演義』『水滸伝』等は、十世紀、宋代に講釈師の口演に源を発する近世中国に用いられていた口語で書かれており、「白話小説」と総称される。それに対して、唐代に発生した「伝奇」と呼ばれる作品や、『聊斎志異』等の作品は、古く周代から知識人が文章を記すために用いてきた古典的な文章語、「文言」で書かれている。われわれ日本人の祖先が、中国の先進的な文化を吸収する手段として考案した「漢文訓読法」は、この「文言」を読むための方法であった。「白話小説」は、「漢文訓読法」では読みこなせない。
明治書院が半世紀にわたって刊行してきた「新釈漢文大系」は、中国における「文言資料」を、思想・文学の広い分野にわたって取り上げた大事業であった。

  しかし、ここには『唐代伝奇』(内田泉之助・乾一夫)の他に「小説」は含まれていない。
このたびわれわれは、中国の「文言小説」を、文字通り「小さい説」として扱われた古代の文献から、清代の『聊斎志異』等に至るまでの小説史上の標識とされる資料・作品を取り上げ、「新釈漢文大系」の方法に倣う形で読者に紹介・解説し、「大系」の欠を補いたいと思って、このシリーズの刊行を企画した。広く「漢文愛好の士」、中国の小説に関心を持つ読者各位に歓迎されることを切に期待する。 [編者]

 

 特色      

本シリーズは、中国における「古典小説」の流れを追い、それぞれの時代を代表する作品を取り上げ、シリーズ全体が「中国古典小説史」を構成することを意図しています。
各作品の冒頭に、「あらすじ」(小品の短篇作品を除く)および「解説」を設け、各作品の概要・特質を紹介し、内容理解の手掛かりとしました。
「現代語訳」は平易な日本語で、楽しんで読めることに重点を置いた。「現代語訳」だけを読んでも作品内容の面白さがわかるように配慮しました。
「原文」は原典を忠実に掲げ、さらに返り点付きとした。これを「書き下し文」と対比して上下に組み、読者の便に供しました。
「書き下し文」の漢字については、全て現代かなづかいでふりがなを付け、読みやすくしました。
「語注」はあまり専門的になりすぎないようわかりやすくかつ最小限としました。
中国文学、日本文学の研究者はもちろん教師・大学生・高校生、一般読書子はじめ、図書館に必備の書物です。

 

 装丁

 A5判 上製 函入 各巻:平均350頁

内容見本 

組見本
 
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全巻リスト

巻数   書名 価格(税込) 
1 穆天子伝・漢武故事・神異経・山海経他<漢・魏> 7,040円 
2 捜神記・幽明録・異苑他<六朝 I> 7,040円
3 世説新語<六朝 II> 7,040円
4 古鏡記・補江総白猿伝・遊仙窟<唐代 I> 7,040円
5 枕中記・李娃伝・鶯鶯伝他<唐代 II> 7,040円
6 広異記・玄怪録・宣室志他<唐代 III> 7,040円
7 緑珠伝・楊太真外伝・夷堅志他<宋代> 7,040円
8 剪灯新話<明代> 7,040円
9 聊斎志異(1)<清代 I> 7,040円
10 聊斎志異(2)<清代 II> 7,040円
11 閲微草堂筆記・子不語・続子不語<清代 III> 7,040円
12 笑林・笑賛・笑府他<歴代笑話> 7,040円